最後まで諦めない

2002年2月6日、マリオ・スタニッチのロスタイムのヘディングがウェストハムGKのデイヴィッド・ジェイムズに防がれた時、私はもう勝ち越し点は生まれないと諦めてテレビを消し、ベッドへ向かいたい衝動に駆られた。

 

シンガポールは朝5時30分。ハマーズとのFA杯4回戦を最後まで見届けるのにあと30分、このまま延長戦までテレビの前に腰を据えるのは疲れ果てた身体には限界だった。

 

しかしそんなジレンマを切り裂いたのが、直後のコーナーにウェストハムの守備陣の誰よりも高く飛んで頭でネットを揺らした、若きディフェンダー。これで3-2とし、勝ち抜けを決めたのだった。

 

このゴールに騒ぎ散らかした私は、ちゃんと眠りにつけるのか不安になったものだ。しかしあの時、アップトンパークでヒーロとなったジョン・テリーは、それから何年もチェルシーサポーターの記憶に残り続ける選手となったのだ。

 

数々のトロフィーと劇的な勝利を経て、私は幸運にも2016年1月、スタンフォードブリッジで行われたエヴァートンとのリーグ戦にてまたもキャプテン、リーダー、レジェンドがヒーローとなった瞬間に立ち会うことができた。

 

ロスタイム8分、ロングボールがエリア内に放り込まれると、抜け出したテリーがティム・ハワードを破り土壇場で3-3としたのだった。

 

まだチェルシーサポーターは数多くスタジアムに残っていて、自分がいた50m先にはテリーがゴールを決めたゴール裏のマシューハーディングスタンドがあり、あの興奮のるつぼの様をこの目で見られたのは光栄だったとも言える。

 

しかし2002年はFA杯優勝を逃し、昨シーズンも10位で終了と、このテリーが決めた2つのゴールがクラブの成績に直接もたらした意味合いは少なかったかもしれない。

 

もちろんこのゴールの間の14年間でクラブは13の主要タイトルを手にし、この功績におけるジョン・テリーの貢献度は計り知れないものがある。

 

しかし、クラブに対する思い、選手に対する愛は単純にメダルやトロフィーの数で決まるものではないのも事実だ。14年越しの、ロスタイムでのゴール。これこそがあの背番号26が今も愛される理由なのかもしれない。

 

フットボールサポーターであれば、選手が全力で戦う様を見たいはずだ。その点、最後までチェルシーの為に戦い抜いたテリーは、まさにその鑑とも言える。

 

チームが傾きかけた時、誰よりも先頭に立って自ら結果で示したあの2試合。絶望が歓喜に変わったあの瞬間は、これからも残り続ける大切な思い出だ。

 

だからこそこれまでもこれからも、真のブルーズ、真のレジェンドであり続けるのだ。